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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)683号 判決 1975年3月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人桧山雄護の上告理由第一点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二点及び第三点について。

所有者の異なる数筆の土地に跨つて存在する建物についての借地法一〇条の建物買取請求権は、当該賃貸人の所有地に存する建物部分が区分所有権の対象となる場合にかぎり、その部分についてのみ認められるものと解すべきであることは、本件を原審に差戻した当裁判所昭和四一年(オ)第六八〇号同四二年九月二九日第二小法廷判決(民集二一巻七号二〇一〇頁登載)の判示するところであり、買取請求をする部分が区分所有権の対象とならないかぎり、これとともにその余の建物部分に対する所有権を賃貸人のために放棄する旨の意思表示をしても、なんら右結論に影響を及ぼさない。したがつて、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人が原判決添付目録(四)の建物部分を除く本件建物に対する所有権を被上告人のために放棄する旨の意思表示をした点に関して判断することなく、上告人の買取請求権を認めなかつた原審の判断は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第四点について。

建物収去土地明渡の民事訴訟の審理又は判決は、計量法一〇条一項及び一一条にいう「取引」又は「証明」には該当しないから、右審理又は判決においては、土地の地積及び建物の床面積を、同法五条一号所定の計量単位(平方メートル)によらないで、尺貫法による計量単位によつて表示することを妨げるものではないと解すべきである(最高裁昭和四三年(オ)第一三〇九号同四五年三月一七日第三小法廷判決・民集二四巻三号一三九頁参照)。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 関根小郷 裁判官 坂本吉勝 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己)

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